LOLLIPOPとPOMPOM(⑦Oiva Toikka Glass and Design part 7)

1968年、Oivaは1960年代の大衆文化の興奮からインスピレーションを得て、ポップアートの重要な要素である色彩・印象的なイメージ、遊び心を反映した数々のアイディアを試みました。LOLLIPOPもその中の1つです。棒つきキャンディー(ロリポップ)をモチーフに製作されました🍭🍭🍭

今回はOivaのLOLLIPOPが生み出された基となった、1960年代の大衆文化の興奮とも表現されるポップアート(芸術運動)について調べてみました😊!

ポップアートとは・・・
1950年代半ばにアメリカ大衆文化の影響の基、イギリスで誕生しました。

大量生産・大量消費の社会をテーマとして表現する現代美術の芸術運動の1つです。

ポップアートは単なる一過性の運動ではなく、1960年代初頭から後半まで約10年間を席巻したムーブメントでした。ポップアート運動の中では、大量生産・大量消費社会を皮肉をこめてデザインしたものもあれば、むしろ自分達を取り巻く社会の風景を、山や海や農村にかわる新しい「風景」ととらえたものもありました。

代表的なポップアートのアーティストとして、ロイ・リキテンスタインやアンディ・ウォーホルがいます。

ポップアートの先駆けと位置づけられている作品に、イギリスの画家Richard Hamilton(リチャード・ハミルトン)が1956年に発表した「Just What Is It That Makes Today’s Homes So Different, So Appealing?(一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしているのか)」があります。

Just What Is It That Makes Today's Homes So Different,So Appealing?

ドイツのテュービンゲン美術館に所蔵されています。
雑誌や広告の魅力的な商品やゴージャスなモデル写真を切り貼りしたコラージュです。
ハミルトンは翌年、この展覧会を振り返って「ポップ」(大衆文化)を次のようなものだとしました。「通俗的、一過性、消耗品、安価、大量、若々しい、しゃれた、セクシー、見掛け倒し、魅力的」

この写真、裸の男女も目をひきますが、私が特に気になったのはボディビルダーの男性です。この男性が持っているのは・・・・

なんと「POP」の包み紙のロリポップキャンディーなのです🍭✨

この作品とOivaが1968年にデザインした「LOLLIPOP」。

何か関連があるのでしょうか🤔
本には以下のように記載してあります。

In 1968, Toikka experimented with a number of ideas that took their initial inspiration from the excitement of 1960s popular culture, reflecting the colours, striking imagery and sense of fun that were important elements of Pop Art.
1968年、Toikkaは1960年代の大衆文化の興奮からインスピレーションを得て、ポップアートの重要な要素である色彩、印象的なイメージ、遊び心を反映した数々のアイディアを試みている。P56 Oiva Toikka Glass  and  Design 

「1960年代の大衆文化の興奮からインスピレーションを得た」と書いてあるので、Oivaがこの作品を知っていたとしてもおかしくありません😊✨

自分なりのガラスという媒体を用いて、当時の大衆文化をデザインしたのではないでしょうか☺️🍭

「LOLLIPOP」は平らな上部がもたらす表面積を最大限に利用し、そこに赤・青・緑・黄・黒・紫といった鮮やかな色を組み合わせて製作されています。この色は、光があたると一層美しく輝きます。Oivaは、「LOLLIPOP」のアイディアは当時Nuutajarviで使用されていた「病的な程甘い色」が、LOLLIPOPの製作に適していると考えたからだと振り返っています。

LOLLIPOPは、非常にシンプルでありながら魅力的なコンセプトであり、その後POMPOM VASEなどに派生していきます。
本には以下のように記載してあります。


The secret of the LOLLIPOP and POM POM series suc cess resided in the duality of their appeal and the ability to remain on the one hand humorous, colourful, childlike objects, whilst simultaneously making profound sta tements about the relationship of glass wit hin a wider creative dialogue that seemed to accurately reflect the unconventional spirit of >>Pop≫ culture.
LOLLIPOPとPOM POMシリーズの成功の秘密は、その魅力の二面性にあります。ユーモラスでカラフルな子供のようなオブジェでありながら、同時に「ポップ」文化の型破りな精神を正確に反映したような、幅広い創造的対話におけるガラスの関係性について深い洞察を与えることができるのです。
 Oiva Toikka Glass  and  Design P60

「LOLLIPOP」や「POMPOM」がどういった背景で製作されたかを知ることで、よりこの作品が好きになりました。時代を超えた魅力というものは、ガラスにこめられた想いや背景を知ることで増幅される気がします。
残念ながらLOLLIPOPとPOM POMシリーズは持っていないのですが、しっぽがPOM属(?)ということでこの子達の写真を・・・。

f:id:aamun_valoblog:20220923105716j:imageOivaToikkaと1960年代
本を読んでいると、
1960年代は「カステヘルミ(1964)」「FRORA(1966)」「BANBOO(1967)」「LOLLIPOPとPOMPOM(1968)」など、現在も世界中の人々の心をつかんで離さない多くの作品をOivaが製作した年代であることを再認識しました。

1960年代の世界情勢は、ベトナム戦争の泥沼化による反戦運動の広がり(フラワーパワー運動)、第2次世界大戦後の先進国における大量生産、大量消費社会をテーマとして表現するポップアート運動などがあります。

Oivaは時代の流れのエッセンスを「カステヘルミ(1964)」「FRORA(1966)」「BANBOO(1967)」「LOLLIPOPとPOMPOM(1968)」を始めとしたガラスへと昇華させたのだと思います。

このたくさん作品が、後に続くBirdシリーズ(1972年~)へとつながっていったのでしょう。


 本の大まかな内容に沿って進んでいますが、読んだ上での感想や自分が調べたことが多いので、本の翻訳というわけではありません。ご了承下さい。
  また、調べたことに関しては参考文献も載せていますが、間違っていることもあるかもしれません。その際はご教授頂けますと幸いです。勉強になります🙇‍♀️

 

Oiva 足跡 年表(自分の備忘録的な目的です)

・1931年 5月29日 Oiva Toikka 誕生

1953年 ヘルシンキ工業大学陶芸学科に入学

・1956年 Nuutajarviの工場で研修生として働く

・1956~1959年 Arabia在籍

・1959年 秋 ヘルシンキの芸術教育学科に入学し、教員資格を取得

・1960~1963年 高校の美術教師

・1963年 Nuutajarviの工場 デザインチームに入職

・1964年 カステヘルミ(Kastegelmi)デザイン

1966年 FRORA デザイン

・1967年 BANBOO デザイン

1968年 LOLLIPOP デザイン

 

参考文献

Oiva Toikka Glass and Design 

This is Media  ポップアートとは?
「ポップアート」 ルーシー・R・リパード
Just What Is It That Makes Today’s Homes So Different, So Appealing? - Art History Timeline (weebly.com)